Introduction
精神、社会、時代。移ろいゆく「身体への眼差し」
私たちの「身体」は、いつの時代も表現の中心にありました。
しかし、「美」の基準は、決して普遍的なものではありません。それは時代ごとの精神性や社会のあり方と深く結びつき、絶えず表現の形を変えてきました。
古代ギリシアが求めた理想的な調和、中世が身体に課した沈黙、そして近代が発見した個の肉体。
表現された身体の一つひとつを紐解いていくと、そこには当時の人々が何を信じ、何を恐れ、何に憧れていたのかという、社会の実像が刻まれていることに気づかされます。
翻って現在、私たちは「身体」をどのように捉えているのでしょうか?
加工された画像やアバター、あるいはバイオテクノロジーの進歩。身体のあり方がかつてないほど揺れ動いている今、身体への眼差しを辿る旅は、単なる知識の習得以上の意義を持ちます。
それは、過去から現在へと続く精神のバトンを受け取り、現代社会に生きる私たち自身の「実存」を問い直すプロセスでもあります。
本講座では、美術ジャーナリストであり大学講師も務める藤原えりみ氏を講師にお招きし、先史時代から現代に至るまでの身体表現の変遷を全5回にわたって深く探ります。
本講座を通じて、時代を超えた俯瞰的な視点で「身体」、すなわち「世界」を捉え直すきっかけをお届けできれば幸いです。
Syllabus
講義内容
vol.1 「見える身体/見えない身体」
テクノロジーにより拡張される「わたし」。霧散する「身体」。
現代において、私たちの「身体」という概念は、テクノロジーの進化によって揺らぎを見せています。テクノロジーは「わたし」の可能性を広げる一方で、肉体という一つの境界が希薄化し、自己存在が情報空間へと溶け出しくような錯覚すら覚えます。
本講義では、日本のSFアニメーションのモチーフを紐解きながら、技術によって現れた「見える身体」と「見えない身体」の間で揺れる、現代人の実存的な問いを入口とします。このような現代への問いかけを基点として、次講以降、西洋の思想と美術が辿ってきた身体観の変遷を深く掘り下げます。
vol.2 身体イメージに侵食する「精神世界」
なぜ古代ギリシアは裸体を礼賛し、中世キリスト教社会は身体を抽象的に描いたのか?
西洋の美意識の源流である、古代ギリシアにおける健やかで理想的な「裸体」への賛美。それに対し、中世キリスト教社会はなぜ身体像を抽象化し、精神世界を絶対的なものとして優先したのでしょうか。精神世界が身体イメージにもたらす影響について、思想史と美術史の文脈から解き明かします。
vol.3 理想的身体の復権
ルネサンス・宗教改革を経て花開く身体美の探求
ルネサンスの人間中心主義と、続く宗教改革の波は、中世の抽象的な身体観を打ち破り、古代が礼賛した「理想的身体」をいかにして復権、昇華させたのでしょうか。古典の学びと新しい知が、いかにして身体美の探求を花開かせ、後の時代の芸術へとつながるのかを考察します。
vol.4 THE NUDE VS THE NAKED
「現実の身体をみつめる眼差し」はいかに形成されていったのか?
芸術作品における「ヌード(Nude):理想化された裸体」と「ネイキッド(Naked):生々しい現実の裸」の対立を通じて、時代がいかにして「現実の身体」をみつめ、表現しようとしてきたのかを追います。美的な理想化から、生々しい現実へと向かう眼差しの形成プロセスを深く掘り下げます。
vol.5 身体の解体と抽象の衝動
近現代芸術が描いた「新しい人間像」
写真の登場、そして二度にわたる世界大戦を経て、芸術家たちは従来の「人間像」を解体し、抽象的な表現へと向かいます。キュビスムや抽象表現主義など、近現代芸術が、混沌とした時代の中で探り当てようとした「新しい人間像」と、その背景にある、人間存在の本質に迫ろうとする衝動とは何だったのでしょうか。
講師
藤原えりみ(スピーカー)
美術ジャーナリスト東京芸術大学大学院美術研究科修士課程(専攻/美学)修了後、ライター・編集者、翻訳者として活躍。著書『西洋絵画のひみつ』(朝日出版社)。共著に『西洋美術館』『週刊美術館』(小学館)、『現代アート事典』『ヌードの美術史』(美術出版社)。訳書に、C・グルー『都市空間の芸術』(鹿島出版会)、M・ケンプ『レオナルド・ダ・ヴィンチ』(大月書店)、C・フリーランド『でも、これがアートなの?』(ブリュッケ)など。『キース・ヘリング アートはすべての人のために』展(中村キース・ヘリング美術館)、『村上隆のスーパーフラット・コレクション』展(横浜美術館)、『石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか』展(東京都美術館)の図録編集を担当。
鈴木芳雄(ナビゲーター)
美術ジャーナリスト・合同会社美術通信社代表ポパイ、アンアン、リラックス編集部などを経て、ブルータス副編集長を約10年間務めた。担当した特集に「奈良美智、村上隆は世界言語だ!」「杉本博司を知っていますか?」「若冲を見たか?」「国宝って何?」「緊急特集 井上雄彦」など。現在は雑誌、書籍、ウェブへの美術関連記事の執筆や編集、展覧会の企画や広報を手がけている。美術を軸にした企業戦略のコンサルティングなども。共編著に『村上隆のスーパーフラット・コレクション』『光琳ART 光琳と現代美術』『チームラボって、何者?』など。現在は合同会社美術痛社社代表として独立し、さまざまなメディアでアート関連の記事、アーティストへのインタビュー記事を担当する傍ら、明治学院大学、愛知県立芸術大学で教鞭をとる。
美術ジャーナリストと探る美術史講座(全5回)
NUDE ーアートはいかに「身体」を捉えてきたのか
講師
藤原えりみ(スピーカー)
鈴木芳雄(ナビゲーター)
⚪︎日時
5月から9月まで(全5回)毎月第3金曜 19:00〜20:30
※ vol.1とvol.5のみ21時まで
vol.1 5月15日 「見える身体/見えない身体」
vol.2 6月19日 身体イメージに侵食する「精神世界」
vol.3 7月17日 理想的身体の復権
vol.4 8月21日 THE NUDE VS THE NAKED
vol.5 9月18日 身体の解体と抽象の衝動
⚪︎会場 オシロ株式会社
東京都渋谷区渋谷1丁目3−3 SOA TOWER 8階
⚪︎受講料
【ビジュツヘンシュウブ。部員】
1回 7,700円(税込)
5回セット 33,000円(税込)
【一般】
5回セット 55,000円(税込)
※単体販売はビジュツヘンシュウブ。部員のみ
全5回セットチケット販売中。
お申し込みはこちらへどうぞ。
https://bijuhen.com/events/9871d85d8f99








